血液中の脂質(コレステロール・中性脂肪)の量が異常な状態です。
多くの患者さんは症状がなく、健康診断で異常を指摘されて発見されることが多いです。
LDLコレステロールは「悪玉」と言われていますが、人体でホルモンを作ったり細胞の膜を作ったりするのに必要なものです。
このLDLコレステロールは全身にコレステロールを運ぶ役割がありますが、多すぎると、余ったLDLが血管壁にたまり、動脈硬化を引き起こします。
HDLコレステロールはこの余分なコレステロールを回収することができるため、「善玉」と呼ばれます。
HDLコレステロールが少なすぎると、動脈硬化が進行してしまいます。
中性脂肪は体内での重要なエネルギー源ですが、過剰になると体内に脂肪として蓄えられ、脂肪肝や皮下脂肪となります。
また、中性脂肪が多すぎるとLDLコレステロールが増加することもわかっています。
脂質異常症の治療の大前提は、生活習慣の改善です。
- 禁煙
- ウォーキングなどの適度な運動
- 野菜・魚類・大豆製品を中心とした食生活
- 節度のある飲酒(純アルコール20g/日)、週2日以上の休肝日
- 純アルコール量(g)=酒量(ml)×度数(%)×0.8
また、ただ単に基準値に入るようにお薬を使えば良いというわけではありません。
患者さんそれぞれが動脈硬化の危険因子をどれだけ有しているか、によって治療の目標が変わってきます。
例1)60歳の女性で喫煙歴がなく、高血圧も糖尿病も肥満もない患者さんが検診でLDLコレステロールが145mg/dlと基準値を上回った場合
→基準値は上回っていますが、他の動脈硬化のリスクを認めないため、まずは食事運動療法を心掛けていただき、経過観察します。
例2)60歳の男性で喫煙歴があり、狭心症を発症し、ステント治療を受けた患者さんのLDLコレステロールが120mg/dlであった場合
→基準値は下回っていますが、この患者さんに対しては、LDLコレステロールを100mg/dl以下に低下させるようにお薬の調整を行います。
このように患者さんの状態に合わせた治療を行います。