下の血圧が高いのは大丈夫?


「上の血圧(収縮期)は正常だけど、下の血圧(拡張期)が高いと言われた」
「薬を飲んでも、下だけが下がらない」
そんな声をよく耳にします。

今回は拡張期血圧(下の血圧)が高い場合の原因やリスク、治療の必要性についてわかりやすく解説します。


血圧の「上」と「下」の違いとは?

血圧は2つの数値で構成されています。

  • 収縮期血圧(上の血圧):心臓が収縮して血液を押し出すときの圧力
  • 拡張期血圧(下の血圧):心臓が休んでいるときの圧力

若い方では、下の血圧だけが高い「拡張期高血圧」が見られることがあります。


なぜ若い人に多い?拡張期血圧が高くなる理由

若い人の血管は弾力があってしなやかです。そのため、心臓が休んでいるとき(拡張期)にも、血液がしっかり全身に送られ続ける力が強いのが特徴です。

このとき、血液が流れる「通り道」が細くなっていたり、ギュッと締まっていると、心臓が休んでいる間の血圧(=拡張期血圧)が高くなることがあります。

これを「末梢血管抵抗(まっしょうけっかんていこう)」といいますが、かんたんに言えば、「血液の通り道のつまり具合・きゅうくつさ」のようなものです。


拡張期血圧が高くなりやすい要因
  • ストレスや緊張が多い:交感神経が優位になり、血管が締まりやすくなります
  • 睡眠不足や生活リズムの乱れ:自律神経のバランスが崩れ、血圧が不安定になります
  • 塩分やカフェインの摂りすぎ:血管が収縮しやすくなります
  • 運動不足や肥満:血流が悪くなり、体に余分な負担がかかります
  • 喫煙:血管を傷つけて細くし、血圧が上がりやすくなります

特に若い男性やアスリートの方では、筋肉量が多かったり、自律神経が活発なため、拡張期血圧がやや高めになることがあります。


拡張期血圧が高いと将来どうなる?

「下だけ高いなら大丈夫」と思うかもしれませんが、放置すると収縮期血圧(上の血圧)も徐々に上昇してくる傾向があることが、以下の研究からわかっています。

✅ Framingham Heart Study や CARDIA Study
若年期に拡張期血圧が高かった人ほど、中年以降に収縮期血圧が上昇しやすく、心血管疾患のリスクも高まると報告されています。


治療中に「下」だけ高いのは問題?

高血圧の治療中に、

  • 上の血圧(収縮期)は正常範囲
  • 下の血圧(拡張期)が90〜99mmHgと高めに残る

というケースもあります。

結論としてのエビデンス
  • 収縮期がコントロールされていれば、拡張期がやや高くても心血管リスクは増加しない
    ⇒(JAMA Intern Med 2017, McEvoyら)
  • 拡張期が100mmHg以上の場合や、合併症がある場合は再評価が必要

💡無理に薬を増やして「下」だけを下げすぎると、心臓への血流が減って逆効果になることもあります。


拡張期血圧を下げるためにできる生活習慣

拡張期血圧が高めの方におすすめしたい生活習慣は以下の通りです。

  • 🧂 減塩(目標:1日6g未満)
  • 💤 睡眠時間の確保(6〜7時間以上)
  • 🚶‍♀️ 有酸素運動(ウォーキングなど)
  • ☕ カフェインの取りすぎに注意
  • 🚭 禁煙・ストレス管理

まとめ|下の血圧が高めでも慌てず対応を

  • 若い方では拡張期血圧が高いことは珍しくありません
  • 中高年以降のリスクを減らすために、今から生活習慣の見直しが大切です
  • 降圧治療中でも、収縮期が目標に達していれば、拡張期がやや高めでも過度に心配はいりません

血圧について、気になる方は、血圧手帳や家庭血圧の記録をご持参のうえ、お気軽にご相談ください。