今回は、「グレープフルーツと薬の関係」についてお話しします。

薬と食べ物の相性について、あまり意識することはないかもしれませんが、グレープフルーツは特定の薬と強く相互作用し、思わぬ副作用を引き起こす可能性がある果物です。

なぜグレープフルーツが薬と合わないの?

グレープフルーツには「フラノクマリン類」という成分が含まれています。この成分は、体内のCYP3A4(シップスリーエーフォー)という酵素の働きを阻害することが知られています。

CYP3A4は小腸や肝臓にあり、多くの薬の「分解(代謝)」に関わっていますが、グレープフルーツによってこの酵素の働きが弱まると、薬が分解されずにそのまま吸収されてしまいます

その結果、薬の血中濃度が通常よりも高くなり、効果が強まりすぎて副作用が出やすくなるというリスクが生じるのです。

相互作用が強い薬の例

グレープフルーツと一緒に摂ることで血中濃度が上昇しやすい薬には、以下のようなものがあります:

薬の種類代表的な薬剤名相互作用の強さコメント
高血圧の薬アムロジピン★☆☆(軽度)注意は必要
   ニフェジピン★★★(強い)併用注意
高脂血症の薬シンバスタチン★★★(非常に強い)併用避けるべき
   アトルバスタチン★★☆(中等度)医師と相談を
不整脈の薬アミオダロン★☆☆(軽度)念のため避けた方が安全
免疫抑制剤タクロリムス★★★(非常に強い)併用禁止レベル
   シクロスポリン★★★(強い)要注意
睡眠薬・精神薬トリアゾラム★★★(非常に強い)禁忌レベルに近い

※星の数は相互作用の強さを示しています(★が多いほど注意)

グレープフルーツだけじゃない!注意すべき柑橘類

グレープフルーツと似たような成分を含むため、同様に注意が必要な柑橘類もあります。

■ 注意が必要な柑橘類(フラノクマリンを含む)

  • グレープフルーツ
  • 文旦(ぶんたん)
  • 晩白柚(ばんぺいゆ)
  • スウィーティー(グレープフルーツ×ポメロ)
  • セビルオレンジ(ビターオレンジ):マーマレードなどに使用

これらは生で食べてもジュースでも相互作用が出る可能性があります

■ 安全性が高い柑橘類(フラノクマリンを含まない)

  • みかん(温州みかん)
  • ネーブルオレンジ
  • レモン、ライム
  • いよかん、はっさく

こうした果物は、一般的には薬との相互作用はほとんど心配ありません。

フラノクマリンの影響は「数日続く」!

グレープフルーツの影響は食べたその日だけではありません
CYP3A4の酵素を抑える作用は1〜3日続くため、前日に食べたグレープフルーツが、翌日の薬の代謝にも影響を及ぼすことがあります。

「今日は薬飲まないから、グレープフルーツ食べても平気かな?」と思っても、次の日に薬を飲めば影響が残っている可能性があるのです。


まとめ

  • グレープフルーツや文旦などは、一部の薬と強い相互作用があります。
  • 薬の効果が過剰になり、副作用リスクが高まることがあるため注意。
  • 「この薬、グレープフルーツは大丈夫?」と思ったら、必ず医師か薬剤師に確認を。
  • みかんやレモンは、基本的に問題ありません。


ご不安な点があれば、診察時に医師に遠慮なくご相談ください。

📚 参考文献

  • FDA Consumer Updates: Grapefruit Juice and Some Drugs Don't Mix
  • Bailey DG et al. CMAJ 2013;185(4):309–316
  • Mayo Clinic Proceedings: Drug-Grapefruit Juice Interactions