これまでに、家庭での血圧測定が重要であるとお話ししましたが、これには早朝高血圧と夜間高血圧が大きく関係しています。
診察室で測定した血圧が正常で、家庭での血圧が高血圧である仮面高血圧については以前お話しいたしました。この仮面高血圧は、さらに早朝高血圧、昼間高血圧、夜間高血圧に分類されます。中でも問題となるのが、早朝高血圧と夜間高血圧です。
血圧の日内変動について
血圧は一日中一定ではなく、日常生活の中で常に変動しています。食事や運動、ストレス、感情の起伏や気温の変化など様々な要因で変動します。
一般的には、自律神経の働きにより血圧は交感神経が活発になる朝から昼間にかけて上昇し、副交感神経が活発になる夜になると下降し、睡眠中はさらに下降します。このような一日の変動パターンを日内変動といいます。
診察室でのたった一度の血圧測定では高血圧かどうかの診断はできないのです。
早朝高血圧とは
早朝高血圧は、起床後1時間以内に家庭で測定した上の血圧が135mmHg以上、または下の血圧が85mmHg以上を基準として診断されます。
降圧薬による治療を受けている患者さんで、診察室で測定すると正常血圧の方は、血圧がうまくコントロールされているようにみえるため、この早朝高血圧が見過ごされてしまうことがあります。
早朝高血圧に影響する因子には、以下のものがあります。
- 飲酒
- 喫煙
- 寒冷
- 食塩摂取量が多い
- 血管硬度の増大(高齢者に多い)
- 降圧薬の持続時間が不十分の場合
早朝高血圧が持続すると、脳卒中や心臓血管病のリスクが高くなることが知られています。
また、早朝高血圧に対して降圧治療を行うことで、高血圧による臓器障害(心肥大や慢性腎臓病、末梢動脈の動脈硬化)が改善する可能性が示されてきています。
夜間高血圧とは
夜間(睡眠時)の血圧の平均値が120/70mmHg以上が「夜間高血圧」と定義されています。
家庭血圧計の中には、夜間(睡眠中)血圧測定の機能がついているものがあります。
睡眠中は、副交感神経が優位になるため、血圧は日中より10~20%低くなるのが普通ですが、逆に高くなる夜間高血圧には以下のような要因が影響していると考えられています。
- 心不全
- 慢性腎臓病
- 食塩摂取量が多い
- 喫煙
- 飲酒
- 肥満
- 睡眠時無呼吸症候群
- 抑うつ状態
夜間高血圧についても、診察室血圧や朝の家庭血圧とは独立して、脳卒中や心臓血管病のリスクが上昇することがわかっています。
診察時には家庭血圧の記録を
以上より、高血圧の診断と治療には家庭での血圧測定が非常に重要です。
より良い治療のために、診察の際には家庭での血圧測定の記録をぜひお持ちください。
血圧手帳でも結構ですし、血圧記録アプリ、ご自分のノートなど形式はなんでも結構です。