慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease :COPD)は、以前は肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気です。
息切れと長引く咳、痰が主な症状です。
COPDの原因の90%は喫煙(タバコ)です。
タバコの煙に含まれる有害物質が肺の構造を破壊することで、肺の働きが悪くなり、起こる病気です。
喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると考えられています。
セルフチェック
4点以上の方はCOPDの可能性があります。
検査と診断
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
息を吸ったり吐いたりして肺の機能を調べる検査です。
1秒量(1秒間に吐くことができる息の量)などを調べることで、気道閉塞の状態を評価します。
また、他の肺の病気(気管支喘息、肺炎など)や心不全の可能性も考慮し、
胸部レントゲン
血液検査(末梢好酸球、必要に応じてNT-proBNPなど)
心電図(必要に応じて)
を施行します。
治療
禁煙
COPDの治療で最も重要なのは禁煙です。
禁煙をするかどうかで、その後の肺の機能は大きく変わってきます。
この表は喫煙による肺の機能の変化を表しています。縦軸が「肺の機能」、横軸が「経過年数」を表しています。一番上が「禁煙を継続した人」の経過であり、1番下が「喫煙を続けた人」の経過です。
禁煙はいつ開始しても遅すぎるということはありません。
今すぐにでも禁煙をしましょう。
自力での禁煙が難しい場合には、医療機関で治療を受けることができます(保険診療)。
詳細は禁煙外来のページをご参照ください。
薬物療法
気管支を広げる作用を持つ吸入薬を使用することで症状を軽減します。
薬を中止した場合、症状はもとに戻ってしまいますので、治療を続けることが重要です。
近年、効果の優れた吸入薬が開発されています。
重症度や併存症に応じて処方をいたします。
①短時間作用型気管支拡張剤
- SABA(短時間作用型β2刺激薬)
- SAMA(短時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬)
②長時間作用型気管支拡張剤
- LAMA(長時間作用型抗コリン薬)
- LABA(長時間作用型β2刺激薬)
- LAMA/LABA配合剤
③3剤配合剤
- ステロイド+LAMA/LABA
感染予防(予防接種)
COPDの患者さんは、ウィルスや細菌の感染をきっかけに「COPD増悪」を起こす恐れがあります。
増悪を起こすと、呼吸困難が悪化し、いつもの治療では改善が得られず、治療内容を変更したり、入院が必要となる場合があります。
増悪を繰り返すと、呼吸の機能が段階的に増悪し、生存率が低下することも知られています。
このため、COPDの患者さんは感染予防が重要です。
インフルエンザワクチン接種によりCOPD増悪による死亡率を50%減少させることが明らかになっています。
COPD患者さんだけでなく、同居のご家族にもインフルエンザワクチン接種が推奨されます。
インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方を接種することで、インフルエンザワクチン単独よりも、COPD増悪の予防効果が高いことが報告されています。